未承認国家で新聞に載った話。

「未承認国家」という存在があります。
当事者は国だと主張しているけれど、周りからは承認されていないという不思議な存在です。
そして今回、僕が向かう国も未承認国家の1つ、ソマリランド。
日本の地図で見ると「ソマリア」と表記されているエリアです。

ソマリランドに入国して1週間以上が過ぎたクリスマスイブのこと。
僕は少年2人に「写真撮って」と声をかけられ、数枚シャッターを押してやりすごそうとしました。
すると少年たちが「撮った写真を見せてよ」とさらに声をかけてきました。写真を見るために近づいてきた少年たちに液晶モニターを見せようとした時のことです。 その少年2人がいきなり、僕が背負っていたリュックのジッパーを開けようと襲いかかってきました。
2人はリュックを強引に開けると、入っていた交換レンズや大事な物をまとめていたポーチを奪って走り去っていきました。

未承認国家にも、当然警察があります。
警察署の中にいた数人の警察官にその画像を見せて回ると、犯人の少年を知っている警察官がいて、名前も住所もはっきり特定することができました。

察官と一緒に急いでその家に向かいます。少年は残念ながら戻っていないようです。翌日のクリスマスも犯人の少年はまだ捕まっておらず、行方に関する新しい情報は何もありませんでした。

今回、盗まれたものは、レンズ1本、現金、パスポート。
最大の問題はパスポートです。たとえ旅先でパスポートをなくしても、たいていの場合は大使館などで手続きすれば再発行したり、日本へ帰るための渡航書を発行してもらうことはできます。

しかしここは未承認国家。
僕はパスポートをなくして、自分の所在が宙ぶらりんになってしまいました。

ふさぎ込んだ気持ちのままお正月を過ごした1月3日のこと。
少年たちが首都から遠く離れた地方で、車の事故を起こして捕まった、というニュースが飛び込んできました。

レンズはまだ彼らの手元にありました。ダメージを受けたようでAFは動かなくなっていました。そして問題のパスポート。これは少年2人が車で逃げる前に、友人に託しておいたようでした。

ただ、壊れたレンズもパスポートも、現時点では重大事件の証拠品なので、簡単に返却することができないようです。
証拠品を返却してもらうためには、事件を解決するしかありません。そのために裁判をやるようです。少年たちは、判決が出た時には、見るからに落ち込んでいる様子でした。

そして壊れたレンズとパスポートが17日ぶりに僕の元に戻ってきました。

その後に新聞の取材を受けることになりました。
翌日の帰国日、新聞の一面に僕の顔写真が載っていました。

入国時より少し汚れてしまったパスポートを持って空港に着くと、働いている空港職員の人が「新聞で見たよ、うちの国民がごめんなさい!」と話しかけてくれました。(小澤太一写真集 赤道白書より一部抜粋)

写真展概要

展覧会名 ソマリランド日和
小澤太一写真展
会場 Nine Gallery
〒107-0061
東京都港区北青山 2-10-22
谷・荒井ビル1F
東京メトロ銀座線外苑前駅
(駅番号G03)
出口3より徒歩3分
> google map
会期 2023年1月24日(火)- 2月5日(日)※ご好評につき会期延長
時間 10:00 - 19:00(最終日17:00まで)
休館日 月曜休館(1月30日)
主催 株式会社エスエス企画

※入場無料、予約不要

写真集情報

Nine Galleryでの写真展開催にあわせて、
Canonの高品質業務用フォトプリンターDreamLabo5000による
オンデマンド制作の写真集を販売いたします。

ソマリランド日和

◆表紙:写真表紙(ハードカバー)
◆外寸:W300×H200mm
◆印刷機:DreamLabo 5000
◆用紙:ラスター
◆ページ数:80ページ
◆アートディレクション:三村漢
◆発売日:2023年1月24日
◆その他:サイン入り

定価 19,800円(税込)

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その他、小澤太一の写真集

赤道白書 赤道白書

赤道白書

225mm×200mm 
240ページ
本体 4,400 円
(税込 4,840 円)
サイン入り

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赤道海国 サントメ・プリンシペ 赤道海国 サントメ・プリンシペ

赤道海国 サントメ・プリンシペ

300×200mm 
114ページ
本体 15,000 円
(税込 16,500 円)
サイン入り

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SAHARA SAHARA

SAHARA

A4判 
90ページ
本体 3,600 円
(税込 3,960 円)
サイン入り

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ナウル日和

ナウル日和

A4判変型 
104ページ
本体 3,200 円
(税込 3,520 円)
サイン入り

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お知らせ

ご好評につき会期延長決定!

新会期:2023年1月24日(火)~2月5日(日)10時~19時(最終日は17時まで)

連日多くのお客様に足をお運びいただいている小澤太一写真展「ソマリランド日和」。
大好評につき会期の延長が決定いたしました。
会期は2023年2月5日(日)まで。この機会にぜひ会場にお越しください。

小澤太一 × 三村漢 スペシャル対談 youtube LIVE配信決定

2023年1月28日(土)19時~20時

写真家「小澤太一」とアートディレクター・装丁家の「三村漢」が、謎の多い未承認国家「ソマリランド」にまつわるエピソードと、写真展・写真集制作の裏側などを時間の許す限りお話します。

動画を見る

小澤太一 × 宮﨑守 スペシャル対談 youtube LIVE配信決定

2023年1月24日(火)19時~20時

写真家「小澤太一」とエスエス企画プリントディレクター「宮﨑守」が、写真展ソマリランド日和を通して、写真家とプリントディレクターの関係性やこぼれ話など、ざっくばらんにお話します。

動画を見る

小澤太一 × 宮﨑守 スペシャル対談 youtube動画公開

2023年1月19日(木)公開

写真家「小澤太一」とエスエス企画プリントディレクター「宮﨑守」が写真展ソマリランド日和を通して、"写真をプリントするということ"について語ります。

動画を見る

小澤太一写真展「ソマリランド日和」ギャラリートーク

2023年1月28日(土) 19時~20時

「未承認国家」という存在があります。当事者は国だと主張しているけれど、周りからは承認されていないという不思議な存在です。
本展では謎の多い未承認国家「ソマリランド」にまつわるエピソードと、写真展・写真集制作の裏側などを時間の許す限りお話しします。

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写真集制作体験イベント

2023年1月24日(火) 15時~17時 / 1月27日(金) 15時~17時 / 1月28日(土) 13時~15時

会期中の3日間、抽選で3名様に本写真展図録と同じ仕様で写真集1冊を無料で制作いただけるイベントです。

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ドリームラボ5000出力体験イベント

本写真展に展示される作品・写真展図録に使用される用紙は、キヤノンの写真技術を終結した高画質フォトプリンター キヤノンドリームラボ5000の専用紙「ラスター紙」です。そのラスター紙であなたの写真を出力しませんか。
専用フォームよりエントリーいただいた方、先着100名様にA4サイズで出力されたラスター紙プリント3枚を展示会場にて無料でお渡しいたします。

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小澤 太一コザワ タイチプロフィール

1975年名古屋生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、写真家・河野英喜氏のアシスタントを経て2000年独立。 雑誌や広告を中心に、子どもからアーティストや女優まで、幅広く人物撮影が活動のメイン。 写真雑誌での執筆や撮影会の講師・講演など、活動の範囲は多岐に渡る。
ライフワークは「世界中の子どもたちの撮影」で、年に数回は海外まで撮影旅行に出かけ、写真展も多数開催している。 キヤノンEOS学園東京校講師。公益社団法人 日本写真家協会会員。身長156cm 体重39kgの小さな写真家である。